北海道大学歯学部口腔診断内科
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口腔診断内科

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顎関節疾患

顎関節疾患

顎関節は、側頭骨と下顎骨を連結する一対の関節で、下顎頭および円板が下顎窩より結節の斜面に沿って動く滑走運動と、両側の下顎頭を結ぶ線を軸とする下顎の回転運動を基本とし、下顎の開閉、両側同時の前後運動、片側のみの前後運動などのきわめて複雑な運動を行い、口腔の機能を果たしています。
先天性の顎関節異常は極めて稀ですが、種々の症候群の形でみられます。

顎関節の炎症性疾患および外傷はとくに顎骨の成長時期に発症した場合、適切な処置が行われないと顎骨の成長に悪い影響を与え、不正咬合を伴う顎骨変形、ときには顎関節強直症を後遺し、形態的機能的障害がみられるのが特徴的です。

また最近は、顎運動時の関節部疼痛、関節雑音および顎運動障害を主症状とし、炎症症状を伴わないで慢性に経過する、いわゆる顎関節症がかなりの頻度でみられるようになりました。本症は、慢性に経過する多病因性の症候群として考えられており、今後さらに整理されるべきものと考えられます。

顎関節に原発する腫瘍は、骨種、軟骨腫などが稀にみられます。

顎関節症

顎関節症は、顎運動時の顎関節部の疼痛、関節雑音および顎運動障害を主症状とし、慢性に経過する多病因性症候群です。明らかに外傷あるいは感染による炎症症状を示すものは、顎関節炎として区別されます。本症は表現型は同じでも、種々の病因が考えられ、いまだ一定の見解は得られていません。

本症は、咬合状態の変化あるいは咀嚼筋のspasmが顎関節に影響を与える場合、また顎関節そのものが過剰運動などにより器質的変化を受けた場合などに種々の症状をひき起こしてくることが考えられています。もちろん、単一の要因によって発症するものもありますが、多くはこれらの要因が相互に関係し、作用し合っているものと推察されます。また、心因性の要因も発症に関係するといわれていますが、とくに近年、社会生活の複雑化に伴うストレスや有病意識の変化などにより、重要視されるようになりました。

一般的には女性に多く、 20歳代を中心に若い人、また神経質の人に多くみられます。ふつうは片側性にみられ、初発症状としては顎関節の運動時疼痛、関節雑音が多いが、来院時の主訴は疼痛がもっとも多く、ついで開口障害、関節雑音の順にみられます。

関節雑音は、関節部に人さし指を当て、運動時に振動として触れる程度のものから、近くの人に聞こえるいわゆる可聴音までありますが、主として顎関節の器質的変化、とくに関節円板のズレあるいは変形など、その構造的変化が関係しています。

本症は歯科治療などによる過度の開口、咬みしめなどの悪習癖、固いものを咬んだ後、補綴物装着などによる咬合状態の変化などのように明らかな動機があり、これに継発して発症する場合もありますが、突発的に発症する場合もかなりみられるのが特徴的です。

また、顎運動、筋電図、X線写真、血液などの臨床検査によっても、本症に特異的な所見はなく、原因が明らかでない場合がほとんどであるため、訴えをよく聞き、発症に関連する要因の発見が大事とされています。このため、処置は対症療法が主体となり、治療には長期間を要する場合が多いのが現状です。