リン酸カルシウムを用いた新規足場材開発と組織再生への応用

我々と東京大学古月研究室の共同研究チームは,リン酸カルシウムを100ナノメートル程度に粉砕・微粒子化してコラーゲン足場材料(スキャフォールド)に配合し,様々な生体活性(バイオアクティビティ)を向上させることに成功しました.ナノ微粒子は吸収が早く,タンパク吸着を向上させ,歯周組織再生のためのバイオマテリアルとして優れた特性を有すると考えられます.
β-TCPナノ微粒子配合スキャフォールドがラット頭蓋の骨増生を促進しました.本研究は2013年の Journal of Nanomaterialsに掲載されました.
β-TCPナノ微粒子配合スキャフォールドをラットの皮下組織へ移植する実験を行いました.細胞,血管が早期から大量にコラーゲン内部へ入り込んでいる(イングロース)ことを観察しました.ナノ微粒子はコラーゲン材料の活性を向上させることが明らかとなりました.本研究は2017年のDental Materials Journalに掲載されました.
β-TCPナノ微粒子配合スキャフォールドをイヌ抜歯窩へ埋入すると,抜歯窩の治癒が促進されました.本研究は2016年の日本歯科保存学雑誌に掲載されました.
β-TCPナノ微粒子配合スキャフォールドを用いてイヌ実験的歯周炎モデル(1壁性)の再生実験を行いました.スキャフォールドは歯周組織再生を促進することが明らかになり,さらに歯周組織再生薬リグロスの主成分である線維芽細胞増殖因子FGF2を併用すると,再生量が大幅に増加しました.本研究は2016年のJournal of Periodontal Researchに掲載されました.