教室概要

 

教授挨拶

「パラダイムの転換を発信せよ!」


薬理学教室は、骨・関節および関連する神経・血管組織を対象とした育薬・創薬科学研究を展開します。これによって、臨床への貢献を目指したトランスレーショナル研究と生物医学的な学理を追求します。トランスレーショナル研究としては、骨粗鬆症をはじめとする代謝性骨疾患、変形性関節症やリウマチなどの関節疾患、口腔顔面痛を含んだ骨格痛を対象とします。また、骨格系の系統発生と個体発生の視点から、発生と老化のメカニズムを探索し、進化医学的な視点からの疾病理解と克服法についても探求します。ヒトの顎・口腔系は独自の進化をした極めて特異的な組織・臓器系です。また、多くの薬物は、全身性に効果を発揮します。したがって、顎・口腔系と体幹・四肢の運動器との比較から、薬理作用や病態生理機構を追求します。これによって、口腔・顎顔面の特異性と一般性の理解を深め、歯学・口腔医学のみならず医学や薬学、生命科学分野への情報発信を意図します。手法としては、分子オミクス、インフォマティクス、イメージングを取り入れ、分子・細胞・組織・個体レベルでの統合的な解析法を用いて薬理学研究を進めます。関連する臨床系および基礎系研究室とのコラボレーションや企業との産学連携研究を進め、社会的にも学術的にも意義のある研究成果を目指します。既存概念を科学的に打ち破る研究成果で、生命医学のパラダイムの転換を、共に発信しましょう。


「アカデミック・リテラシーを育め!」


薬理学教室の教育理念は、「アカデミック・リテラシー」の育成です。大学の重要な使命として、幅広い知識を授ける教養教育とともに、高い専門的知識とその運用能力を授けることが挙げられます。学部・大学院、いずれの教育現場においても、情報・知識・概念を的確に読み取り、適切に分析・理解・解釈し、表現運用できる能力(これをアカデミック・リテラシーと呼びたいと思います)を授けることが重要と考えます。リテラシー(literacy)とは、書き言葉を正しく読んだり書いたりできる能力すなわち識字能力を意味するものでした。情報化が進んだ現在では、この意味はより広義に発展して、情報に対する高い理解・運用能力を意味するようになりました。すなわち、「文脈を読む力」「文脈とともに知識と情報を整理し、先を読む力・判断する力」と言っても良いと思います。コンセプトの変遷を知る歴史観、生物学的階層を跨ぐ視点、組織・臓器間の連関の視点、社会科学と自然科学の相互視点など、時空間を超える多角的視点で、個々のサブジェクトを観て・考えることで、観抜く力・考え抜く力を、一緒に育みましょう。


北海道大学大学院歯学研究院 薬理学教室
教授  飯村 忠浩