口腔分子生化学
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- 骨代謝
- 細胞生物学
- アルツハイマー
- ゲノム医学
- 歯周病
- 血管形成

分子生化学は、生体内の分子レベルでの機能を解明し、疾患の発症メカニズムを明らかにする学問分野です。本教室では、遺伝子発現、タンパク質機能、代謝経路の理解を深めることで、病態の分子メカニズムを探求しています。また、生化学的視点から多様な疾患を研究し、基礎研究と臨床応用をつなぐことを目指しています。
1.骨粗鬆症とアルツハイマー病に関与する多発性遺伝子(pleiotropic gene)の分子メカニズム解明
近年、骨粗鬆症とアルツハイマー病が共通の遺伝的要因を持つことが明らかになりつつあります。特定の多発性遺伝子(pleiotropic gene)は、骨代謝と神経変性の両方に関与し、その発現異常が疾患の進行に影響を及ぼす可能性が示唆されています。本教室では、遺伝子発現解析や分子生物学的手法を駆使し、これらの遺伝子が疾患発症にどのように関与するのかを解明することを目指しています。2.
2.慢性歯周炎の主要原因菌 Porphyromonas gingivalis に関連する炎症反応とアルツハイマー病の進行メカニズムの研究
歯周病の主な原因菌である Porphyromonas gingivalis は、慢性的な炎症を引き起こし、全身疾患との関連が指摘されています。特に近年、P. gingivalis が脳内へ移行し、アルツハイマー病の病態形成に関与する可能性が報告されています。本研究では、炎症応答を中心に、歯周炎がアルツハイマー病の発症・進行に及ぼす影響を解明し、新たな治療戦略の構築を目指しています。
3.AIを活用した新薬開発およびバイオインフォマティクス解析の導入
本教室では、人工知能(AI)を活用した創薬研究とバイオインフォマティクス解析を推進しています。大規模なゲノムデータやプロテオミクスデータを統合的に解析し、疾患に関連する新規バイオマーカーの発見や創薬ターゲットの特定を行っています。また、AIを基盤としたターゲット分子構造解析を活用することで、疾患治療に有望な新薬候補の探索を加速し、個別化医療の実現に向けた研究を展開しています。
4.組織再生のための血管形成メカニズムの解明
本研究では、血管新生を制御する分子メカニズムを明らかにし、特に血管内皮細胞の増殖や遊走、血管網の形成に関与するシグナル経路を解析します。また、成長因子や細胞外マトリックスの影響を調べ、効果的な血管再生を誘導する因子の特定を目指しています。これにより、創傷治癒や歯周組織再生、骨再生などの再生医療への応用を視野に入れた研究を展開しています。
これらの研究を通じて、口腔領域と全身疾患の関連を明らかにし、新たな治療戦略の開発に貢献することを目標としています。本教室では、基礎研究と臨床応用を結びつける学際的なアプローチを重視し、未来の医療に貢献することを目指しています。
担当教員
李 智媛