口腔診断内科学教室で学んだこと / 加島 裕基

私は現在、医局の関連病院である北星記念病院へ出向、勤務させて頂いております。
大学とは物理的に距離は離れますが、そんな今でも、口腔診断内科学教室の魂が私に降臨してくれます。O先生の口調、口癖が知らぬ間に伝染し、緊張の場面でも安心できたり、A先生が患者さんや学生さんに説明している内容をそのまま真似した結果上手くいったり、手術中困ったとき、C先生と手術に入った時と同じようにしたらあっさりと窮地を乗り切ることができたり。どうやら困るとよく降臨するのが特徴のようです。

 市中病院は市中病院である故に、大学病院とは多くの面が異なり、当然厳しい面もあります。経験の少ない出向医は少なからず洗礼を受けます。そのような中で浮かぶのは、口腔診断内科学教室で上司や周りの先生に助けられ日、苦労した日、当たり前のように何気なく過ごした日々、時に愚痴をこぼしながらも課題や仕事に向きあった日、そんな日々の経験です。楽ができたラッキーな日や美女と飲み通した夜の記憶は甘美で心の大事な栄養ですが、目の前の現実にある歯科医師としての試練や責務を切り抜ける必殺技にはなりません。

 大学を離れると実感します。責任を負う難しさ、逃げられない状況で決める覚悟の重み、周りに多くの人員がいることのありがたさを。口腔診断内科学教室で学ぶことは外の世界でも十分に活きていて、また外の世界で生きる上での基本です。その場にいる時のみでなく、離れてからもそこでの経験や記憶が生きるこのような場所は、今の世の中なかなかありません。