第42回骨形態計測学会 学会報告記 を掲載しました。

第42回骨形態計測学会 令和4年6月30日/3~7月2日 
鳥取県米子コンベンションセンター
文責:佐藤孝紀(薬理学教室 大学院生)
① 荷重骨と非荷重骨の微小重力下環境における骨量変化の違い
シンポジウム3『メカニカルストレスの増減に伴う骨の変化』
(上岡寛先生、沖本信和先生、塚本学先生、粕川雄司先生、吉村典子先生)
本シンポジウムでは、メカニカルストレスに応答した骨代謝調節による歯の移動や、荷重・非荷重骨のメカニカルストレスが及ぼす骨量変化、PTH製剤と運動療法の併用効果などが議論された。その中でも特に、荷重骨は微小重力下では骨量が減少する一方、非荷重骨では骨量減少するという報告は非常に興味深かった。非荷重骨では筋収縮がメカニカルストレスとなって骨量が維持されているのか、それとも骨代謝のメカニズムがそもそも荷重骨と異なるのか、非常に考えさせられる議論であった。
② 骨粗鬆症治療薬の逐次投与に対するエビデンス
シンポジウム4『骨形態計測からわかった骨形成促進薬の動的作用~この結果をどう臨床に生かすか~』
(飯村忠浩先生、酒井昭典先生、千葉恒先生、高田潤一先生)
本シンポジウムでは、イメージング解析などの基礎データからHR-pQCTによる骨微細構造解析の臨床データを統合して、PTH製剤などの骨形成促進薬の薬理作用について議論された。その中で特に、骨粗鬆症治療薬の逐次投与に対する臨床データが非常に興味深かった。PTH製剤は骨密度上昇効果が大きいものの、適応が限られる上に使用期間にも2年の制限があるために、使用前後の治療薬の選択を配慮することが重要である。特に、PTH製剤投与前に抗RANKL抗体などの強い骨吸収抑制薬を投与していた場合には、PTH製剤の骨密度上昇効果があまり得られないという報告は、治療薬それぞれの作用機序の観点から非常に納得のいくものであった。本シンポジウムでの議論から、基礎研究のデータと臨床データの繋がりを深く感じ、基礎と臨床の両方の視点からの統合的理解の重要性を、改めて提案するシンポジウムであった。
③ Wnt signalの活性化による骨芽細胞再活性化のデモンストレーション
一般演題Ⅳ-2 『骨形成過程における骨芽細胞形態とWnt Signalによる骨芽細胞の再活性化の時空間的解析』(辻直紀先生)
本発表では、in vitro組織構築系に、SHGを用いた骨基質の可視化ならびにライブイメージングを用いて、骨芽細胞形態の経時的な変化を解析していた。Cuboidalな骨芽細胞が扁平な骨芽細胞(Bone lining cell)へと変化する過程を、非常に明解にデモンストレーションした研究報告であった。さらに、GSK-3阻害薬(BIO)投与によるWnt signal活性化により、Bone lining cellがCuboidalな骨芽細胞へと再活性化されることを可視化・証明し、非常に感動的な研究報告であった。このようなin vitro組織構築系を用いて、in vivoでは観察が難しかった生命現象を観察する手法は、とてもユニークであり有効な手法であると感じられた。

2022年07月15日