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機械的刺激による組織改造現象の構造解明に関する研究

研究概要

  矯正治療において歯の移動は、支持組織(歯槽骨、歯根膜)の組織改造によって起こると考えられています。その時の現象として圧迫側歯槽骨では破骨細胞による骨吸収が起こり、牽引側歯槽骨では骨芽細胞による骨添加が起こります。この時、歯と歯槽骨に挟まれた歯根膜組織、歯根膜細胞および破骨細胞の動態変化についての研究を行っています。

研究テーマ

  1. 三次元立体培養ヒト歯根膜細胞を用いた研究
  2. 破骨細胞分化誘導系における機械的刺激の影響
  3. マウス切歯歯根膜にあるペリオスチンに関する研究

1.三次元立体培養ヒト歯根膜細胞を用いた研究

  生体により近い実験系を再現するためにコラーゲンスポンジを用いて三次元立体培養ヒト歯根膜細胞を作製し、種々の機械的圧縮を加え、産生される破骨細胞分化に関するサイトカイン遺伝子発現量の変化と圧縮量の関係を明らかにすることを目的として研究を行っています。 その結果、圧縮量が大きい時に歯根膜細胞が破骨細胞分化を誘導するサイトカインを多く産出している訳ではないことが明らかになり、矯正治療において歯を移動する最適矯正力に必ずしも強い力が有効ではなく弱い力が推奨されると考えられます。

コラーゲンスポンジ細胞充填像

コラーゲンスポンジ細胞充填像

2.破骨細胞分化誘導系における機械的刺激に関する研究

1. Flexercell tension systemを用いた破骨細胞分化誘導系の解析

 RANKLを添加することで破骨細胞に単独培養できるRAW264.7細胞に細胞伸展率10%、30cycles/分で破骨細胞への分化過程に機械的刺激を与えた。結果、破骨細胞の分化誘導は抑制され、その解放後急激に破骨細胞への分化・融合が促された。その一連の過程でのmRNAやタンパクを測定し遺伝子レベルでの解析を行っている。

Flexercell tension system

Flexercell tension system

 2. 圧縮力に対する破骨細胞分化誘導系の解析

 研究テーマ1と同様の分化誘導系を用いて圧縮刺激に対して検索した。圧縮の 方法や圧縮の強さでいくつかの反応を示した。アポトーシスやネクローシス関連ではない細胞死による細胞減少を示すパターンもあれば破骨細胞の分化誘導が促される圧縮力の存在も明らかになった。これらの反応に対してもその関連因子に対して遺伝子レベルでの解析を行ってる。

 これら研究テーマから破骨細胞単独でも機械的刺激に対してのメカノセンサーが働いている可能性について研究を進めている。

破骨細胞分化像

破骨細胞分化像