「特殊な骨髄炎」
骨粗鬆症の予防・治療薬として広く使用されているビスホスホネート製剤やデノスマブ製剤を長期間使用している患者さんでは、歯科治療に際して特別な注意が必要となります。これらの薬剤を使用中の患者さんが、重度の歯周病やむし歯などを理由に抜歯を行った場合、顎骨の骨髄炎を発症することがあります。
この病態が報告され始めた約20年前には、抜歯前に3か月程度の休薬を行うことが推奨されていました。しかし近年の研究では、休薬による明確な予防効果が不明瞭であることが示されており、現在では、感染を起こしやすい特殊な状況を除き、必ずしも休薬を行わずに対応することが一般的となっています。
とはいえ、「転ばぬ先の杖」として最も重要なのは、投薬開始前に口腔内の状態を整えておくことです。すなわち、悪い歯や歯周病を事前に歯科医院で適切に治療しておくことが、顎骨骨髄炎の発症予防につながります。
また、これらの薬剤は、がんの骨転移に対する治療にも使用されますが、その場合は骨粗鬆症治療と比べて高用量で投与されることが多く、顎骨骨髄炎の発症頻度も高くなります。そのため、がん治療に伴いこれらの薬剤を使用する場合には、投薬前の歯科受診が必須となります。
投薬後に、やむを得ず抜歯などの外科的処置が必要となった場合には、一般歯科での対応ではなく、口腔外科や口腔内科などの専門医療機関を受診することをお勧めします。