福井大学歯科口腔外科との共同研究で、以下の論文がJournal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology (JOMSMP)にpublishされました(2024年7月)。
『Palatal island flap with or without hinge flap for closure of oroantral or oronasal fistula: A technical note. J Oral Maxillofac Surg Med Pathol, 36(4),566-569,2024.』
和文サマリー:
口蓋に生じた口腔上顎洞瘻孔に対するhinge-flapと口蓋弁/口蓋島状弁を用いた新しい 二重弁閉鎖法の臨床的検討
【目的】口蓋に生じた口腔上顎洞瘻孔は副鼻腔炎、上顎洞や鼻腔への食物流入、構音障害などを引き起こすことがある。瘻孔の閉鎖は、口蓋弁や口蓋島状弁単独によるものが一般的である。二重閉鎖による報告もあるが、多くは歯槽部の瘻孔に対して歯槽粘膜と口蓋粘膜あるいは歯槽粘膜と頬側粘膜を用いた二重閉鎖法である。
口蓋の口腔上顎洞瘻孔に対して行ったhinge-flapと口蓋弁または口蓋島状弁を用いた新しい二重閉鎖法の詳細を報告する。
【方法】手術手技はhinge-flapをによる一次閉鎖と、口蓋弁または口蓋島状弁を用いた二次閉鎖からなる。瘻孔周囲を切開し粘膜剥離子を用いて瘻孔中心部に向けて粘膜骨膜を全周剥離する(hinge-flap)。口蓋粘膜を落とし込む形で縫合するが、この際に上皮同士ではなく巾着的に結合組織同士の関係になるように、鼻腔側粘膜を緊密に縫合し一次閉鎖とした。次に、健側(ドナー側)の口蓋粘膜から口蓋弁または口蓋島状弁を形成・回転し、一次閉鎖を覆うように二次閉鎖を行った。ドナー側の骨露出部位はアテロコラーゲン(テルダーミス®️)を填入し、抗菌薬入り軟膏ガーゼとシーネにて被覆した。
【成績】ドナー部位の上皮化までは6ヶ月程度を要した。
【結論】本術式の利点は、二次閉鎖がし開しても強力なhinge-flapによる一次閉鎖により鼻腔や上顎洞への穿孔を防ぐことができ、確実な閉鎖が期待できる点である。今回紹介した二重閉鎖法は、口蓋の口腔上顎洞瘻孔の閉鎖術として有用な手術法と考えられる。

