BMSに対する新規薬物治療

Burning mouth syndrome患者に対するデュロキセチンの効果.

日本歯科心身学会雑誌 39(1,2) 1-9  2024.

<論文要約>

本研究では,2010年から2023年の14年間に北海道大学病院口腔内科を受診し,口腔灼熱症候群(Burning Mouth Syndrome:以下BMS)と診断された患者2105症例のうち,2週間以上にわたりデュロキセチンを単独投与した患者42症例について,その特徴と治療効果を明らかにすることを目的として,後方視的に検討した.

BMSと診断された患者に対して20mg/日を初期投与量としてデュロキセチンを単独投与し,効果発現を認めない場合は40mg/日へ増量,それでも効果発現を認めない場合は最大で60mg/日まで増量を行った.

調査項目として,全症例で年齢,性別,病悩期間,治療成績,副作用の有無を検討した.
治療成績にて改善と判断された症例については,治療効果発現までの期間,治療効果発現時の投与量,再発の有無について後方視的に検討した.
対象患者の平均年齢は60歳(中央値62歳)で女性が81%を占めていた.病悩期間は平均27ヶ月(中央値10ヶ月)で二極化する傾向を示した.全体の改善率は36%(15症例/42症例)であり,改善症例のうち73%(11症例/15症例)で1ヶ月以内に効果発現を認め,いずれもその際の投与量は20mg/日であった.

神経障害性疼痛のガイドラインにおいて,デュロキセチンは第一選択薬に分類されており,2023年に保険適用が認められた抗うつ薬の一つである. 近年ではBMSが神経障害性疼痛の一部と考えられており,デュロキセチンの歯科での処方は広がりつつある.

本研究は北海道大学病院自主臨床研究審査委員会の承認の下に行った

(承認番号 023-0230).