北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室

Gerodontology, Department of Oral Health Science, Faculty of Dental Medicine, Hokkaido University

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高齢者に多い口腔の訴え

 近年、歯科の外来に「口が渇く」、「口のなかがネバネバする」、「舌がヒリヒリして痛い」、「食事がおいしくない」、「口の中が苦い」などを訴えて受診する高齢者が増えています。これらは、単に口が渇くから口腔乾燥症、舌がヒリヒリして痛いから舌痛症、食事がおいしくないから味覚障害と単純には診断がつけられず、さまざまな要因が複雑に関係しています。特に口腔乾燥症、舌痛症、味覚障害、口腔カンジダ症の4つの疾患は互いに密接な関係を有しています。例えば味覚障害を例に挙げますと、唾液分泌量が低下し口腔乾燥が進行しますと、味物質が味を感じる細胞(味蕾)への到達が障害されるために味覚障害がおこる場合がありますし、口腔カンジダ症では、口内に何も食べ物がなくても苦味や渋味を常に感じる場合があります。また、舌痛症のなかには「味がしなくなった」、「美味しくない」といった味覚異常を訴える患者さんが少なからず認められます。

 私が以前、所属していた北大口腔診断内科のホームページでは、「舌」、「舌が痛い」、「舌がピリピリする」、「舌痛症」、「舌の痛み」などをキーワードにしたアクセスが極めて多数を占め、巷にはこんなにも舌が痛いことで悩んでいる高齢者が多いのかと驚かされました。おそらくその方々の多くは、どこの病院や診療科で診てもらえば良いのかわからず、お困りではないでしょうか。

 舌が痛い患者さんの約8割は「舌痛症」と「口腔カンジダ症」ですが、他にも重度の口腔乾燥や、鉄やビタミンB12不足の貧血で発症する舌炎、口内炎なども原因の場合があります。見た目では異常が分かりにくい場合もありますので、血液検査やカンジダ検査などの検査を行う必要があります。

 北大高齢者歯科では、高齢者の方々のこれらの悩みに対し、種々の検査を行ってから診断をたて、個々の患者さんに合った治療法を選択しています。これらの疾患は、生活習慣病としての側面もあり、日常生活での患者さん自身の生活習慣を見直してもらう場合もあります。

 高齢者の方でこれらの症状でお困りの方は、是非、遠慮なくご相談ください。

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