北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室

Gerodontology, Department of Oral Health Science, Faculty of Dental Medicine, Hokkaido University

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のどの調子が悪い方へ

 最近、のどに何かが引っかかったり、張り付いたり、溜まっているような狭窄感、異物感、違和感などを訴えられる患者さんが増えてきています。
 症状の特徴として、痛みはなく、食事は普段問題なく食べれていますが、食事後や飲食していない時にのどの異常感を意識されます。皆さん、内科で胃カメラによる上部消化管検査や、耳鼻咽喉科で内視鏡検査をしてもらい、一様に問題ないとされ気のせいだと説明されます。しかし、症状は一向に良くならないので、複数の医療機関を転々と渡り歩かれるいわゆるドクターショッピングされている方が多くなっています。
 このような患者さんの多くは、「咽喉頭異常感症」と思われます。この病気は、昔から内科領域ではヒステリー球、漢方医学的は咽中炙臠(いんちゅうしゃれん)梅核気(ばいかくき)と呼ばれてきた心因性の疾患になります。以前は女性の方が多かったのですが、最近では男性の方にもみられるようになっています。

 当科でこのような訴えの患者さんが受診された場合には、念のため嚥下機能を、VF(透視化嚥下造影)検査やVE(嚥下内視鏡)検査、その他の各種嚥下機能検査で確認します。そして、これらに異常がなく、逆流性食道炎がない場合には、「咽喉頭異常感症」として薬物療法を行います。咽喉頭異常感症に良く効く西洋薬はなく、漢方薬がもっぱら使用されます。そのなかで「半夏厚朴湯」という漢方薬はこの症状の第一選択薬として知られていますが、すべての症例に効果があるわけではありませんので、効果がない場合には別の漢方薬を処方します。また、半夏厚朴湯には、嚥下反射や咳反射を改善させる効果が知られています。これは半夏厚朴湯が、嚥下反射・咳反射に関与するサブスタンスPという物質の分泌を促す効果によるものと考えられております。そのため、現在、脳血管障害による嚥下障害の高齢者に対して、誤嚥性肺炎の予防に盛んに用いられるようになっています。

参考文献)中澤誠多朗、他: 重度の咽喉頭異常感症に半夏厚朴湯が著効した1例. 北海道歯誌 39: 146-150, 2019.

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