大理石骨病を背景とした顎骨骨髄炎

大理石骨病を背景とした顎骨骨髄炎

以下の論文がJournal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology (JOMSMP)にpublishされました(2024年7月)。
大理石骨病を背景とした顎骨骨髄炎で稀な、1例です。

『Refractory maxillary osteomyelitis with osteopetrosis: A case report. J Oral Maxillofac Surg Med Pathol. 36(4):615-623,2024 .』

和文サマリー:
大理石骨病を背景とする難治性上顎骨骨髄炎の1例

【緒言】大理石骨病では,骨密度が増して骨髄腔が消失し,骨硬化の結果,却って脆くなり易骨折性となる.骨の血行消失により骨髄炎もしばしば生じ,顎骨では難治性になりやすい保存療法と外科的介入を行い,その経過中に各種画像評価を行った大理石骨病を背景とする上顎骨骨髄炎の症例を経験したため報告する.

【症例の概要】2年前から歯肉腫脹を繰り返していた歯を近医歯科で抜歯し,洞口腔瘻を生じたため当科紹介受診となった.CTにて左上顎骨骨髄炎,副鼻腔炎と腐骨分離を認めた.患者は小児期に大理石骨病と診断されており,全身の骨硬化を生じていた.TC-99m骨シンチでは,四肢骨のとくに膝関節、足関節への集積がびまん性に亢進しており,頭蓋骨にもびまん性、軽度の集積亢進を認めたが,顎骨への取り込み増加は認めなかった.大理石骨病を背景とする左上顎骨骨髄炎・骨壊死,副鼻腔炎と診断し,抗菌薬投与および高気圧酸素療法と複数回の手術を行った. 顎骨骨髄炎に対する治療を継続し,最終的に全身麻酔下の外科的消炎術,洞根治術,腐骨除去術を行い,その手術の6か月後に抗菌薬投与を中止して,骨髄炎症状の再燃なく2年が経過している.TC-99m骨シンチを再度実施したが,顎骨への蓄積は認めなかった.

【結語】大理石骨病を背景とする場合,顎骨骨髄炎が難治性となり得る.難治性顎骨骨髄炎では,TC-99Mが骨代謝の活性領域に蓄積され,治療効果を判断する指標として有用であるが,大理石骨病を背景としたため骨髄炎の状態が反映されなかった.MRIも同様に解釈に注意を要するため,より注意深い経過観察が必要とされる.