日本においては味覚障害の主因のひとつは亜鉛欠乏とされているが、その治療効果も画一的ではなく、治療に難渋することが多い。
当科でも亜鉛欠乏性味覚障害の患者さんには亜鉛補充療法を行っているが、その効果は十分とはいえない。亜鉛欠乏の指標は血清亜鉛値であるが、血清亜鉛値は体内の亜鉛量の0.1%未満とされ、体内亜鉛の過不足を正しく反映していないこと、日内変動や種々の条件で変動しやすいことから絶対的な指標にならないとも言われている。
そこで、体内亜鉛量を正確に測定するため、亜鉛に依存的に活性を示す亜鉛要求性酵素:アルカリホスファターゼ(ALP)、ENPP、5-NTなどに注目した。
本研究では、患者の唾液は非侵襲的に繰り返しサンプル採取可能であり、時間や場所の制約を受けないなどの利点が多い。
血清亜鉛値に代わる新たな診断マ-カ-を確立して、治療効果判定に利用できるかの検証を行う(北海道大学病院自主臨床委員会承認済み)。当科で診ている味覚異常患者の年間20例程度の組み入れを行い共同研究先である、京都大学および京都女子大学と解析を行い、亜鉛補充療法前後で臨床症状および血清亜鉛値に関連した亜鉛要求性酵素の変化を認めた。
本研究結果は、2024年4月に、症例報告としてJournal of Medical Case Reports (Expression analysis of zinc-metabolizing enzymes in the saliva as a new method of evaluating zinc content in the body: A case report and literature review)に掲載され、クラウドファンデイングにて支援を頂いた研究資金を下に行いました。
今回は2症例の報告のみでしたが、多数例の症例を対象とした研究を準備しております。また、御報告させていただきます。

当科での口腔乾燥症の評価と検査法を示します(下記)。 自覚的口腔乾燥度の評価には、VAS(Visual analog scale)を用います。客観的口腔乾燥については口腔内を観察し4段階(柿木分類を用いて)で評価します。唾液分泌量については、当科ではガムテストを用いて10分間ガムを噛んだ時の刺激時唾液量を測定しています。


・口腔保湿剤の使用
・唾液線マッサージ
・シェーグレン症候群の場合は内服薬の投与
・ガム刺激療法
など、原因に応じて治療を行っています。