教授ご挨拶

日本は世界に類を見ない超高齢社会を迎えています。近年、8020達成者の割合は大きく増加し、85歳を超えても多くの歯を有する高齢者が増えてきました。一方で、認知症や要介護状態となった高齢者では、口腔機能の低下や歯科疾患の進行により、食事や栄養状態、さらには全身の健康に大きな影響が及ぶことが明らかになっています。このような背景から、歯科医療には「歯を治す医療」から「生涯にわたり口腔機能を支える医療」へと、その役割の拡大が求められています。

北海道大学高齢者歯科学教室では、多職種連携に基づく高齢者歯科医療の実践と教育を行うとともに、臨床研究、基礎研究、政策研究の三つの柱から研究を推進しています。

臨床では、補綴治療や摂食嚥下リハビリテーション、周術期口腔機能管理、訪問歯科診療などを通じて、生涯高齢者の生活機能の維持・向上に貢献する診療体制を整えるとともに、臨床研究を通じて新たな医療技術、システムの開発と検証にも取り組んでいます。研究面では、口腔機能と栄養・フレイルとの関連を明らかにする大規模疫学研究や、AI・DXを活用した摂食嚥下機能評価技術の開発、さらにそれらに関連する基礎研究との連携によるトランスレーショナルリサーチを進めています。加えて、地域や行政機関、他の研究機関、企業との連携による臨床研究および大規模疫学研究を通じて、成人から要介護高齢者までの口腔機能や栄養状態の実態を明らかにし、その成果を歯科保健医療政策へと還元することも重要な使命と考えています。

本教室は、教育・研究・臨床の融合を通じて、超高齢社会における新しい歯科医療のあり方を探究し、口腔の健康を基盤とした健康長寿社会の実現に貢献してまいります。

北海道大学 大学院歯学研究院
口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室

教授 渡邊 裕