・歯学部における学生の教育(学士過程)
当教室における歯学部学生の教育目標は,「機能回復を通して生活の質(QOL)や口腔関連QOLを向上し,全身の健康状態に寄与する補綴歯科治療」を習得すべく,科学的情報を基盤としてクラウンブリッジ補綴学と口腔インプラント学を体系的に学習することにあります.クラウンブリッジ補綴学と口腔インプラント学の講義では,咀嚼・嚥下・発音・審美・バイオメカニクスといった審美的要素と機能的要素を融合して統合的に理解するとともに,補綴歯科治療による歯の欠損や失われた歯列の回復が,QOLや口腔関連QOLに与える影響を科学的に解説しています.さらに,当教室の特色であるデンタルバイオロジー研究の知見を教育内容に反映し,骨免疫,骨代謝,骨質,インプラント界面の生物学といった,次世代の歯科医師に希求される生物学的思考を深層化する学習構造を整えています.
一方,実習教育では,支台歯形成・印象採得・咬合採得・暫間補綴作製・最終補綴装置装着までの一連の補綴歯科治療術式を模型で行い,精度・再現性・治療効率などを重視して実践的教育を行っています.また,口腔内スキャナー(IOS),CAD/CAMシステム,ガイドサージェリー,3Dプリンティング(Additive Manufacturing:AM)といったデジタル歯科の基盤技術を,歯学部学生における早期段階から学習し,現代の補綴歯科治療が要求するデジタルワークフローを包括的に習得していきます.CAD/CAMシステムとともに,今後は歯科領域でも躍進が期待されているCADとAM(付加造形)を融合したシステムの学習は当教室における特徴のひとつであり,技術の習得のみならず,デジタルデータに基づいた治療計画立案能力も培うことができる教育体系となっています.
さらに当教室では,顎機能異常(顎関節症,睡眠時無呼吸症候群,日中・睡眠時ブラキシズムなど)の病態理解にも重点を置いているため,筋活動解析や睡眠に対する補綴学的アプローチや咬合・咀嚼系の動態分析などを通して,「顎口腔機能を精確に評価して診断し,補綴歯科治療へと応用可能な歯科医師」の育成を目指しています.学部段階から生物学・顎口腔機能学・歯科材料学・デジタル工学を統合して教育を展開することで,基本的治療や高難度補綴歯科治療に加え,歯学研究にもつながる基盤を構築しています.
・歯学院における大学院生教育(博士課程)
大学院教育の最終目標は,認定医や専門医といった高度医療を提供できる知識・技術・態度を有しながらも,高度な研究能力を兼ね備えた歯科医師の育成にあります.
本教室が強みとするデンタルバイオロジー研究(MRONJ,インプラント界面の生物学,骨再生,細胞療法,医療機器開発,材料開発と解析,デジタル歯学,付加造形技術応用,ならびに顎機能動態解析など)を教育の中心に据え,基礎研究から臨床応用までを一貫して学習できる体系を構築しています.
MRONJ領域では,その病態形成機構や治療法を,マクロファージ階層構造,骨髄幹細胞,硬軟組織の免疫応答機構,骨リモデリング動態など,さまざまな観点から総合的に理解し,種々の薬剤や治療術式を併用したMRONJモデル動物の開発,遺伝子改変マウスの利活用,細胞実験,さらにはヒト臨床データを統合して網羅的に解析する教育を行っています.これにより,単なる知識習得ではなく,研究仮説を自ら構築し,検証するリサーチマインドを育成しています.また,インプラント研究では,バイオメカニクス,骨免疫学,ならびに再生医学などの観点から多面的に理解し,科学的根拠を探求できる高度な教育を行っています.
さらに,材料研究,デジタル歯科研究(形状精度,誤差解析,AI・CAD設計),医療機器開発研究など,工学や医学との横断研究を研究テーマとして取り扱っており,医歯工(産学)連携研究の推進に寄与しています.そして顎機能異常に関しては,当教室が開発したウェアラブル筋電計(保険収載済み)による筋電図解析,睡眠ポリグラフ,顎運動解析装置などを利活用し,顎関節症・睡眠時無呼吸・ブラキシズムの実態解明研究や補綴歯科治療戦略の実際を修得するように心がけています.
・全学教育(リカレント教育)
当教室における全学教育の理念は,「科学的根拠を基盤として,地域医療から国際医療(社会)までを幅広く網羅し,かつ実践的にそれらに寄与できる歯科医師の育成」です.すなわち,学部と大学院教育にとどまらず,研修歯科医修了後の教育や大学院修了後の教育を含めたリカレント教育といった,全学的教育/生涯教育を行っており,学内外のさまざまな専門家と連携しながら社会に貢献できる歯科医師の育成を推進しています.多くの客員臨床医師を招聘し,多角的な視点で学習可能な教育環境を整備しています.教育対象としては,歯学部学生,研修歯科医,大学院生,歯学部教員,歯科衛生士,歯科技工士,さらには地域医療機関で働く一般開業歯科医師となっており,学修段階に応じた教育活動を展開しています.さらに本教室は国際教育にも積極的で,海外研究者(特に米国と韓国)や留学生との交流,英語教育,国際学会参加支援を通じて,グローバルに活躍できる歯科医師養成を推進しています.
