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学部教育

歯科矯正学教室 学部学生教育

 北海道大学は学生教育に関して、教育情報システム(ELMS)の充実などを通して、行き届いた学生教育環境を有しています。このような背景の中で、歯科矯正学教室における歯学部の学生教育に関しても、学部や本学と協調しながら可能な限り教育環境を整えるための努力をしています。
 本HPではまず学部学生の教育に関する現況をご紹介し、今後の展望に関して最後に述べさせていただきます。
 講義や実習の詳細についてはシラバスをご覧下さい。

[1] 講義

1. 歯科矯正学講義(3年)

 歯科矯正学を総論と各論に分け、30コマの時間配分で講義します。1学年(50-60名)を1クラスとして講義します。歯科矯正学、矯正歯科治療に関する基礎知識の修得が目的であるため、配布資料、パワーポイントや板書を用いた講義が中心となりますが、ロールプレイやクリッカーの使用、さらにはアクティブハンドアウトの使用などを通じて、なるべく一方向の授業形態にとどめず、双方向になるような工夫を行っています。各授業のはじめに前回講義に関する確認を記述形式で行います。

2.その他の講義
1)統合講義(6年)

矯正歯科治療に関する課題があたえられ、これについてPBLチュートリアルの形式でグループワークを行い、同学年の学生を相手に90分の講義を行います。発表にはパワーポイントを用いますが、必ずいくつかの設問を設け、受講する学生がクリッカーを用いる事で双方向の形態とし、より知識の理解が深まるようにしています。

統合講義を行う学生

統合講義を行う学生

クリッカーで回答しながら統合講義を聴講する学生

クリッカーで回答しながら統合講義を聴講する学生

2)臨床講義(5年~6年)

それまでの講義実習で得た知識を統合して理解を深めるために、多くの症例を提示し、主治医の経験談等を交えた講義が行われます。院外からの矯正歯科を専門としている非常勤講師の先生による講義も3回含まれます。また、学生自身が症例を1つ選択し、検査結果、診断、治療経過を確認、情報活用力強化のために文献考察を加え、45分間でプレゼンテーションを行う実習も含まれます。

[2]実習

1.臨床基礎実習

1) 舌側弧線装置作製実習(3年後期)。
舌側弧線装置の設計の基本、使用法、臨床への応用法などまで学びます。パフォーマンス課題でもあることから、各学生の技術のみならず、態度などの向上も目的とします。そのため主体的自己学習能力やプロフェッショナリズムといったアウトカムを設定しルーブリックを用いた自己評価を試験的に導入しています。将来的にはポートフォリオ導入を考えています。各実習のはじめには、紙もしくはクリッカーによる前回実習の振り返りを行っています。

2) 症例分析実習(4年前期に5コマ)
実際に治療を終えた患者さんの資料を用いてセファロ分析、模型分析、抜歯分析、を行い診断・治療方針の立案を行います。5人前後の学生に教員もしくはTAが一人つく形で行われます。事前の配布資料でセファロ分析の特徴的な点等を解剖学的に理解することからはじまり、最終回では、各人が検討した治療計画をPBLチュートリアルに準じた形式でディスカッションし、プレゼンテーション能力の強化を目的にした発表まで行います。ここでもルーブリックを用いています。

2. 臨床実習(5年~6年)

各グループ6−8人で3日間を1単位とした病院内における臨床実習が4回行われます。

1)相互実習の課題として、舌側弧線装置の作製実習:

歯間離開から始まり舌側弧線装置を作製、試適までを行います。

2) 学生同士での不正咬合を前提とした診断資料採得と治療方針の決定:

印象採得、顔面写真撮影、口腔内写真撮影、などを行い、資料をもとに、実際の診断・治療計画の立案を行っています。

3) タイポドント実習:

固定の概念を説明し、実践できるための実習です。

4) 各種不正咬合の診断、治療方針の決定:

I級叢生症例、成長期のII級症例(2例)、成長期のIII級症例、外科的矯正治療症例、について、実際の患者の資料をもとにチュートリアル形式で、症例分析、診断、治療方針の立案までを行い、診断のプロセスを理解し、いくつかのtreatment optionを提案できることを目的にしています。

5)診療参加型臨床実習:

教授診断への参加、外来診療の見学・参加が行われます。外来では、診療参加型臨床実習の充実を踏まえ、積極的に学生を診療に参加させています。

学部学生教育の展望

 平成23年度における歯学教育モデルコアカリキュラム改訂に伴い、歯科医師として求められる基本的な資質が、歯科医師としての職責、患者中心の視点、コミュニケーション能力、チーム医療、総合的診療能力、地域医療、研究志向、自己研鑽、というような形で項目だてされるようになりました。このような項目は卒業時に学生が獲得しているコンピテンシーとして捉える事ができることから、本モデルコアカリキュラムの改訂により、従来型のプロセス基盤型カリキュラムからアウトカム基盤型カリキュラムの導入まで視野に入れた対応が必要にせまられる場面もでてくると考えます。また、昨今のアジアならびに世界の教育動向、ボローニャプロセス、医学教育の国際認証に関わる問題、などを踏まえると歯科医学教育においても今後大きな変革が迫られる局面を迎えることは必至であると考えます。すでに北海道大学では高いレベルで国際標準の授業を提供できるように日々改革がすすめられておりますし、教育情報システム(ELMS)によりすべての学生がアカウントを取得するなど、資料の配信やe-learning、レポートの提出などをWeb経由で完結できるシステムをもっております。このように、北海道大学は学生教育に関して充実サービスを提供できる環境にありますので、歯学研究科・歯学部に属する歯科矯正学教室においても、学部や本学と協調しながら、可能な限り教育環境を整えるための努力をしています。