研究院長より

歯科医療・歯科医学の発展を超えて
- 未来への架け橋
北海道大学 歯学研究院長・歯学部長
網塚憲生

北海道大学歯学部は札幌キャンパスのイチョウ並木に面しており、四季折々の美しさを味わうことができます。また、札幌駅の近くに位置しながらも、豊かな自然、そして、多くの学生や海外留学生が行き交う素晴らしい環境のなかにあります。

北海道大学歯学部は、昭和42年6月に設置されてから本年(令和4年)で55年目を迎えました。その間、平成12 年の大学院重点化により大学院歯学研究科が大講座制に移行し、平成29 年には、大学院歯学研究科が大学院歯学研究院・大学院歯学院に改組されています。本学は、歯科医学・歯科医療の発展を目指し、多くの優秀な歯科医師および歯学研究者・教育者を輩出してきました。また、北海道大学の4つの理念である「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を柱として、豊かな人間性とリーダーシップを有し、また、協調性を尊ぶ人材育成に尽力して参りました。

北海道大学大学院歯学研究院・歯学院および歯学部は、歯学教育・研究・臨床を主軸としながらも、国際協働および地域社会に広く寄与することも目的としております。最先端の歯科医学や医療技術開発の一方、社会的ニーズであるAI の活用やDX 化、ダイバーシティー・インクルージョンを含むSDGs、地域共生・地域バイオコミュニティーなどにも取り組む所存です。時代は刻々と変化するものであり、将来を見据えた歯科医療・研究・教育、および、大学として貢献すべき社会実装を果たしてゆく必要があります。

北海道大学歯学研究院・歯学院では、本学がこれまでに培ってきた歯科医学・医療の様々なシーズと企業の技術力・開発力を融合させることで、新しい歯科医療機器や歯科材料の研究開発を推進して参りました。本年からは、産学連携を発展させたデンタルイノベーション構想のもと、企業との共同研究の深化と臨床への展開、そして、企業と大学の協働による若手人材育成を目的にしたデンタルイノベーションスペースが稼働します。また、障害者歯科医療や在宅歯科治療・口腔介護に重点をおいた地域バイオコミュニティーの創成に貢献してゆきます。国際協働については、世界的視野を持つ人材育成を目指し、歯学部における海外短期留学の設定に加え、歯学院では、留学生が修得した知識や技術を母国に持ち帰り、また、彼らの後輩が本学にて新しい技術・知見を習得するといった人材的インバウンド・アウトバンドを循環させ始めています。このように、本学は世界的に質の高い歯科医学・歯科医療を提供する国際協働を目指しています。

私たちは、歯学部創設以来の理念である「口腔の健康管理を通して、全身の健康管理に寄与し、ひいては人類の健康と福祉に貢献する」をいつも心がけ、教職員の不断の努力と学生の真摯な学びを大切にしてゆきたいと考えております。その一環として、本学では、4学期制を取り入れ、歯科医学だけでなく関連医学、プロフェッショナリズム、さらにはチーム医療といった専門教育に関する新しいカリキュラムを実施してきました。また、歯学部卒業後の臨床研修やさらにその後のリカレント教育も充実させてゆく所存です。

最後になりましたが、最も大切なことは、歯科治療技術の修得だけでなく、医療人としての思いやりと豊かな発想を持つ人材を育むことです。生命科学や医療技術の進歩、あるいは、時代とともに移り変わる社会や医療制度が変わったとしても、それを切り拓いてゆける「人」が全てです。北海道大学大学院歯学研究院・大学院歯学院および歯学部は、今後とも、歯科医学・歯科医療の発展、ならびに、未来を託せる医療人の育成に尽力して参ります。

今後とも、北海道大学大学院歯学研究院・歯学院および歯学部を宜しくお願い申し上げます。